コロナウイルス感染克服の道筋
世界のコロナウイルス感染動向
2019年12月上旬に中国・武漢で発生、世界中に感染が拡大している新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の世界の感染者数は153,822,366人で、少なくとも3,358,018人が死亡しています。
現在では感染拡大は220の国・地域に達していて、そのうち209の国と地域では死者が報告されています。
(REUTERS グラフィックスより引用)
日本の新型コロナ感染の状況
2021年5/8時点での日本国内のコロナ感染状況は下図の通りです。
5/5の新規感染者数は4,067人、7日間の平均値は5,028人となっています。
海外で開発・承認された主な新型コロナワクチン
政府は東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に4月25日から5月11日までの17日間、昨年4月、今年1月に続き3回目の緊急事態宣言を発出しましたが、コロナウイルス感染者数の激減は現在のところ難しいのではないかと予測されています。
コロナの感染は大都市圏だけでなく、地方にも凄い勢いで拡散していて、5/7に政府は4都府県の来週5/11の期限を5/31まで延長するとともに、感染拡大が顕著な愛知県と福岡県を来週5/12から5/31までの期間対象地域に加えることを決定しました。
欧米諸国に比べワクチン接種開始で遅れをとった日本ですが、ワクチン接種が感染者数増加を防止する決め手となりますので、可及的に早くワクチンを入手し、接種を希望する国民全員に接種がいきわたるよう対応することが強く求められます。
日本で接種される海外開発の新型コロナワクチンは以下の通りです。
(画像:インターネットより引用)
現在日本で接種されているワクチンはファイザー社製のものだけです。
モデルナワクチンは既に米国、欧州、カナダ、イスラエルで承認を取得していて、日本での開発、申請、流通は武田薬品が担い、早ければ5月21日にも承認の方向で調整されています。
政府は5月24日に開設される東京、大阪の新型ワクチン大規模接種センターで1日1万人規模の接種をモデルナワクチンを使用して実施する方針で、7月中に高齢者接種を終了させる考えです。
日本国内の当面のワクチン接種計画は次の通りです。
日本国内メーカーによるコロナワクチンの開発は有効性を判断するための大規模臨床治験実施が壁となり、早期の承認の見通しは立っていません。
当面はファイザー社製、モデルナ社製、アストラゼネカ社製のワクチンに頼らざるを得ない状況です。
世界的にはイスラエルを筆頭にワクチン接種は進み、ワクチン接種により、感染者数が減少して来ている国もあります。
KBS WORLDの5/7発表で接種率が最も高いのはイスラエルで1回目の接種率は62.5%、2回の接種完了率は58.9%、イギリスは1回目50.6%、2回目22%、米国は1回目43.7%、2回目30.9%、フランスとドイツの1回目の接種率は20%水準で、2回目はそれぞれ9.6%と7.6%でした。
日本の1回目接種率は2%、2回目0.8%にとどまり最も低い水準となりました。
イスラエルでは高齢者優先で開始されましたが、現在は16歳以上の全住民に対象が拡大されていて、発症の大きな減少は最初接種を受けた60歳以上の高齢者と接種の開始が早かった都市部で確認されました。
最近の情報ではイスラエルではコロナによる死者がゼロとなっていて、ファイザー社製ワクチンの効果の高さを物語るものと言えます。
これはロックダウン(都市封鎖)でみられなかったことで、ロックダウンではなく、ワクチンによって感染が減少していることの有力なエビデンス(証拠)と考えられます。
BBC Newsによるとイスラエルではこれまでのワクチン接種の予防効果は臨床治験時と同じ94%であることが明らかとなっています。
イスラエル最大の保健機構クラリットによると2020年12月20日から2021年2月1日までの期間、ワクチン接種済み60万人とワクチン未接種の60万人を対象にウイルス検査を実施し、ワクチンを接種したグループでは発症が94%少なかったことを報告しました。
この両グループは年齢、居住環境、併存疾患などの健康状態に差が出ないように調整されていて、ファイザー社製ワクチンは重症化もほぼ完全に抑え、全ての年齢層でみられたようで、臨床治験でデータ不足との指摘もあった70歳以上の高齢者でも同等の効果が得られました。
今回の調査結果では無症候性のウイルス感染も抑えることが出来ることが示されていて、第3相臨床試験では評価されなかった項目であり、重要な情報と思われます。
✅この結果は重症化しやすい人達に高率のワクチン接種が必要なことを示したと結論しています。
この調査結果は有名な国際医学雑誌 The New England Journal of Medicineの2021年2月24日号に掲載されました。
日本経済新聞によると英国政府発表で、英国ではファイザー社製ワクチン接種により1回の接種で高い効果が得られ、65歳未満の医療従事者の感染リスクが70%減少し、2回目接種を受けた場合は85%リスクが減少したとしています。
新型コロナ治療薬開発動向
2021年4月4日付け日本経済新聞にも掲載されていますが、ワクチンに比べ治療薬開発が遅れて来た最大の理由は有効性の評価が難しいことがあげられています。
ワクチンの場合はワクチン接種された人が感染した割合を統計学的に評価することが出来ますが、治療薬は、発熱やせきなどの症状の改善、入院期間の短縮、死亡率の変化など多岐にわたる項目で治療効果をみることが必要なことが障害となっています。
腫瘍の大きさで効果を判定するような抗がん剤と異なり、感染症治療薬は体内のウイルス量の変化だけではなかなか評価しにくい点があげられます。
特に新型コロナは通常の感染症より病態が複雑なことが明らかになって来ました。
無症状から軽症の時はウイルス量が急速に体内で増えますが、中等症の状態になると逆に体内のウイルス量が減り肺に炎症が起き、さらに重症化するとウイルス活動は低下するが、炎症が全身に広がり体内の免疫反応に異常をきたします。
症状が変化するたびに治療薬、治療法を変える必要があり、患者の症状に合わせて一つの薬剤だけでなく複数の薬剤を組み合わせて治療することが必要とされています。
新型コロナ新規感染者数はワクチン接種が始まった1月をピークとして米国や英国で減少に転じたものの、3月に入りブラジルやインドで再び増加し始めました。
世界的なパンデミック状態を封じ込めるにはワクチンと治療薬の両方が必要だと思われます。
日本で承認された3つのコロナ治療薬
日本の新型コロナ治療薬として最初に承認されたのはレムデシビルでもともとはエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬で、コロナウイルスを含む一本鎖RNAウイルスに抗ウイルス活性を示す薬剤です。
日本では2020年5月重症患者を対象に厚生労働省が特例承認し、2021年1月には添付文書が改定され中等症患者にも投与が可能となりました。
続いて新型コロナ治療薬2例目として2020年7月17日厚生労働省に承認されたのは、すでに様々な疾患で用いられているステロイド薬のデキサメタゾンで、英国でコロナ重症患者の死亡率を下げる研究結果が出ていました。
そして、厚生労働省は2021年4月23日には日本国内3例目となる経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤バリシチニブ(商品名オルミエント)を新型コロナ治療薬として適応追加を承認しました。
酸素吸入や人工呼吸器管理、ECMO(体外式膜型人工肺)が必要な重症患者が対象で、レミデシビルとの併用が前提となっています。
バリシチニブは2017年に既存治療で効果不十分な関節リウマチを適応として、また2020年12月には既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応が追加されていた薬剤です。
炎症や免疫反応に関わるサイトカインによる免疫反応の過剰な活性化(サイトカインストーム)を抑制する作用を有しています。
✅日本で承認された新型コロナウイルス感染症治療薬
- レムデシビル
- デキサメタゾン
- バリシチニブ
今後有望視されるコロナ治療薬
2021年5月4日配信のAERA dotで報告された有望視される新型コロナ開発薬です。
新型コロナ治療薬の開発で注目を集めている一番手は米国製薬大手のメルクでバイオベンチャーのリッジバックと共同開発を進めている経口の抗ウイルス剤「モルヌピラビル」(開発番号MK-4482)で、メルクの日本法人MSDが2021年4月の記者会見でモルヌピラビルの5日間の投与で感染性のあるウイルスは100%消失したとの報告がなされました。
2021年3月6日に発表された第2相臨床試験の中間解析結果で、外来で治療を受ける患者を対象にモルヌピラビルまたはプラセボ(偽薬)を投与、鼻咽頭拭い液から採取した新型コロナウイルスの培養試験で、投与5日目にプラセボ群は25人中6人からコロナが検出されましたが、モルヌピラビル群の47人からは誰も検出されなかったことが明らかとなりました。
2021年5月上旬までに日本を含めた国際第3相臨床試験を開始する予定で最終データは9月か10月に集計されます。
モルヌピラビルは軽・中等症の患者が対象で、実用化に成功すれば、診断後早期のうちに1日2回、5日間服用する治療となる予定です。
モルヌピラビルの作用様式は新型コロナウイルスが増殖する際、遺伝子を複製する元の部分に類似体を取り込ませ、これによる複製エラーを生じさせることでウイルスの増殖が抑えられ、変異株の影響も受けないと考えられるとしています。
スイスの製薬大手のロシュも経口の抗ウイルス剤の開発を目指していて米国バイオベンチャーのアテアと共同でAT-527の第2相臨床試験を実施中で6月までに第3相試験に入る予定です。
軽症者からこのような飲み薬が処方されるようになれば新型コロナの感染状況も一変すると考えられます。
家庭内感染拡大防止が有望視される抗体医薬
点滴で投与する抗体医薬も注目されていて、ヒトモノクローナル抗体が現在米国製薬大手のリジェネロン、イーライリリーなどで開発され米国FDA(食品医薬品局)から緊急使用を許可されていますが、日本でも一部臨床試験が開始されています
ヒトモノクローナル抗体はワクチンでは抗体が出来るまで2週間程度かかるので、家庭内で感染者が一人でも発生した時、残りの家族に感染が広がるのを防ぐことが出来る点が注目されていて、実際リジェネロン社製の抗体は感染予防効果が最初の1週間で72%、それ以降では93%の効果を示しました。
この他日本国内で承認されたり開発中の新型コロナ治療薬は次のようなものがあります。
このリストの中で前述したようにバリシチニブは日本国内3例目の承認薬となっています。
日本国内の製薬メーカーも鋭意新型コロナワクチン及び治療薬の開発に取り組んでいて成果に期待したいと思います。
【新型コロナウイルス】新型コロナウイルス感染症の現況報告!!【COVID-19】
昨年12月末以来世界的に大流行している新型コロナウイルス感染症について資料に基づき情報発信します。
(1) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を取り巻く現在の状況
このところ、世界中が新型コロナウイルス感染で多数の感染者さらには多数の死者も出て大変深刻な状況となっています。根本対策には治療薬開発が急務です。
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