自分をはみ出し者と称する粋がり!
背中に彫り物をした兄ちゃん
昔、私が小学校の頃、近所に製材・建具の業務を行っている資産家の家がありました。
長男や二男は真面目に家業に勤しんでいるのですが、三男坊がどうも手におえないお方でした。
仕事をしないから、暇を持て余して小学生をからかって遊んでいました。
銭湯での出来事
私の小さい頃は家に風呂があっても子供は夕方近くになると銭湯に出掛けて友達同士で風呂で遊んだり、風呂屋で相撲のテレビ中継を見て楽しむ習慣がありました。

銭湯
早い時間ですから、銭湯に来る人は老人か、子供か、暇を持て余しているような人しかいなかった。
粋がっている例の兄ちゃんも早い時間から銭湯に来ていました。
背中に龍の彫り物をしていっぱしのヤクザを気取っていました。
私達が鼻をかんでチンとやっていると、こら汚いからやめろと大きな声で叱りつけるのですが、当人はいつも鼻チンをやっていました。
それと老人で熱いお湯が好きな人が多くて、私達が水を入れようとすると怒る方もいらっしゃいました。

銭湯風呂
それを見て、また例の兄ちゃんは私達に注意するんです。
お爺さんが風呂に気持ちよく入っているのを邪魔したらいかんと怒鳴りつけるのです。
その時はいっぱしの正義の使者 のような様子です。
誰かが夜のお供を強要される
そのうち、兄ちゃんは私達のうちの一人を呼びつけて、今晩いいなと小声で話しかけて来ます。
呼びつけられて今晩いいなと言われた人がいわば今宵のいけにえです。
子供だから夜、家にいないとおかしいのですが、この兄ちゃんは家の人には絶対に言わないようにと強制的に夜のお供をさせるのです。
夜のお供とは?
夜のお供を一度させられたことがありますが、カーバイト燃料で船を出し魚を捕りにいくお手伝いです。
海にしかけた竹の中にウナギが入っているのを見つけて、オッいるいると言って引き揚げます。
また、蛸壺を引き上げ、中に入っているタコを取り出し船に乗せています。
漁師さんが仕掛けたものから勝手に獲物を得て平気な顔をしています。
私がそれって泥棒じゃないですか と言ったら、そんな大きな声で言うなと自分のやっている行為を反省することもなく、叱りつける有様です。

泥棒
私がたまたま岸壁の岩場に入りこもうとするタコを見つけ、ヤスでついて捕まえたら、よしよしでかしたと言ってやはり自分の獲物とします。
家ではごくつぶしと言われていた
ところがどうも家では兄ちゃんは旗色が悪いらしく、役立たずだの色んな罵詈雑言を浴びせられているらしい。
だから、人前でも俺はどうせはみ出し者さと居直っていました。
どうも権力のある人には弱い らしい。
その反動が私達子供に向けられているのは誰の目にも明らかであった。
その後、兄ちゃんとは一度も顔を合わせていないが、どのような人生を送っているか興味のあるところではある。
今では権力に弱い人は、より弱い人間をしいたげるものだということを身をもって示してくれた貴重な人であったと思っています。
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