今回は、昨年12月末以来世界的に大流行している新型コロナウイルス感染症について資料に基づき情報発信いたします。
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を取り巻く現在の状況
このところ、世界中が新型コロナウイルス感染で多数の感染者さらには多数の死者も出て大変深刻な状況となっています。
フランス通信社のAFP(L’Agence France-Presse)が2020年4月18日午前4時にまとめた統計(各地のAFP支局が各国当局から収集したデータと世界保健機関「WHO」からの情報に基づいたもの)は次の通りです。
多くの国では、症状が特に重い患者にのみ検査を実施していて、実際の感染者はこれより多いとみられます。
- 現在流行中心地となっている米国では、3万4575人が死亡、68万3786人が感染、少なくとも5万6546人が回復した。
- 次いで被害の大きい国はイタリアで、死者数は2万2745人、感染者数は17万2434人。
- スペイン(死者1万9478人、感染者18万8068人)、フランス(死者1万8681人、感染者14万7969人)、英国(死者1万4576人、感染者10万8692人)
- 香港とマカオを除く中国本土では4632人の死亡と8万2367人の感染が発表された。
- 地域別の死者数: 欧州9万6721人(感染110万677人)、米国・カナダ3万5929人(感染71万5428人)、アジア6801人(感染15万7131人)、中東5371人(感染11万7953人)、中南米・カリブ海諸国4242人(感染8万9460人)、アフリカ995人(感染1万9296人)、オセアニア83人(感染7785人)となっています。
中国で昨年12月末に新型コロナウイルス感染が発生して以降、これまでに193の国・地域で計220万7730人余りの感染が確認され、少なくとも48万3000人が回復して
います。
日本国内の新型コロナウイルス感染症の2020年4月18日12:00時点での発生状況
は次の通りです。
感染症患者6056人(国内事例6011人、チャーター便帰国者事例11人、空港検疫34人),
日本国内の死亡者は154人
コロナウイルス感染の発生地である中国の武漢では都市封鎖(ロックダウン)が行われ、外出禁止令が出されました。
さらに感染が欧州にも拡大し、イタリアやフランスでもロックダウンが行われ、必要不可欠な場合を除いて基本的に外出が禁止されました。
最も強烈なロックダウンを行ったのがインドで、2020年3月25日から21日間、約13億人に上る国民に対して事実上の外出禁止令が出されました。
日本でも安倍首相から緊急事態宣言が発出されてから、三密(密閉した空間、密集した場所、密接した場面)を避ける動きがどんどん加速しています。
小池東京都知事から発出された休業要請で、休業要請対象となった業態・施設ではこれまでの営業活動やその他の活動を停止する事態となってきています。
現在のところ確実な治療薬がない状態で、感染拡大への対応策としては、
- 三密回避で感染拡大の可能性を防止する。
- 手洗い、アルコールによる手指消毒、マスク等の防具の使用で感染予防または感染拡散防止策を講ずる。
- 運動(人混みを避け散歩、ジョギング、筋トレ)、睡眠、食事(腸内環境を整える発酵食品・食物繊維の摂取・NK細胞増加)、笑顔(NK細胞増加)により免疫力を維持・強化する。
- PCR検査により感染の有無の判定をし、感染と診断された場合は指示されている施設で隔離措置をとる。
ぐらいしか方策がない状態と言えます。
つまり、積極的に感染したウイルスを退治する治療方法(治療薬)がないため、感染しないように気をつけるしかないわけです。
免疫力の中でも重要な役割を果たしているのが、腸内に存在する免疫細胞や生まれながら備わっているナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性でこれらの免疫細胞の活性を増強することがコロナ感染から自分の身を守る重要なポイントとなります。
NK細胞は体内を循環し、ウイルス感染細胞や自然発生するがん細胞をチェックして、ウイルスに感染したり、がんになるのを防衛する働きをしています。
免疫力アップといった場合最も重要な一次防衛線の働きをしているのはNK細胞であると言っても過言ではありません。
その他、細菌、ウイルス、花粉など異物が体内に入ると、これらの体外の異物にある抗原と特異的に結合する抗体(免疫グロブリン)を作り、異物を排除するように働きます。
私達の身体はどんな異物が侵入して来ても、それとぴったり合う抗体を作ることができます。
さらに血中を流れる抗体は異物にある抗原と結合すると貪食細胞であるマクロファージや好中球(白血球の一種)を活性化して異物を排除します。
マクロファージや好中球も感染などから身体を守る重要な働きをしています。
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日常生活、事業・営業活動等の制限とそれに対する対応策の模索
東京都の小池知事のコロナウイルス感染拡大の防止を目的とした休業要請により遊興施設、大学や学習塾など、運動や遊技のための施設、劇場など、集会や展示を行う施設、商業施設などはほとんど仕事が出来ない状況に追い込まれています。
具体的には、パチンコやカラオケ、居酒屋など多くの人達が集まるようなところは事実上、人が出入りできない状態ですし、音楽コンサート、芝居、学術集会などのイベントも中止が相次いでいます。
基本的に家にいて外出を極力控えるようにとの指示ですから、日常生活の厳しい制限から体調や精神状態に変調をきたす可能性もあると思います。
したがって、時々は外で散歩、ジョギングなどの軽い運動、家でもストレッチなど筋トレなどで心身をほぐすことが大切だと思います。
現在は、日常生活に必要な食糧、物品の購入などしかできない状態で、会社も現場でしか仕事が出来ない人を除いてはテレワークが強力に推進されていますので、電車やバスもガラガラの時が多いですし、通りも人通りが極端に減っているところが多くなっています。
それでも一部の商店街などでは人出が多いようで、三密回避の原則からは好ましくない地区もあるようです。
行動制限からのストレスを回避するため外出している人が多いのではと推測できます。自分はあるいは自分の周囲は大丈夫だろうという判断だと思いますが、これが感染拡大の一因にならないか懸念されます。
今、休業要請により各種営業活動が閉塞的状況となっていますが、飲食店などもデリバリーで料理を消費者の皆さんに届けるシステム作りをしたり、テイクアウトを呼びかけるなど生き残りをかけた真剣な取り組みを開始しています。
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新型コロナウイルス感染に対する本格的な取り組み~治療薬の確立を目指して~
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これまでもウイルス、細菌などによ
- る各種感染症に人類は叡智を傾けて取り組んできました。
その結果、結核、ペスト、天然痘など多くの感染症の治療に成功して来ました。
しかし、今もなお世界的にみると結核、マラリア、エイズの三大感染症をはじめ多くの感染症で命を奪われる人の数は非常に多いのが実態です。
今回の新型コロナウイルス感染症はまさしく世界中に拡大していて、パンデミックといえるとWHOからも声明が出されました。
つまり、これからも感染が拡大していくとの見通しを示したものと言えます。
患者数の多い米国でもこれまでマスク着用は予防効果なしとみなしていましたが、最近の動向では、マスク着用は予防効果があり、着用を推奨するようになってきています。
予防が感染拡大防止のため、重要なことは間違いなく、各種予防対策についてこれまで示してきましたが、本質的には確実に効果を示す治療薬が開発されないと、新型コロナウイルス感染症の猛威に打ち勝つことはできません。
新型コロナウイルス感染症治療薬開発動向

新型コロナ治療薬
上の図は現在日本で開発中あるいは開発が検討されている新型コロナウイルス感染症治療薬のリストです(化学工業日報2020年4月7日より引用)。
日本で新型コロナウイルス感染症に対する観察研究・臨床研究が実施されている
医薬品は2020年4月上旬時点で
①富士フィルム富山化学が創製した新型インフルエンザ治療薬「アビガン」
②米ギリアド・サイエンシズがエボラ出血熱治療薬として開発していた「レムデシビル」
③帝人ファーマの喘息治療薬「オルベスコ」
④アッヴィの抗HIV(エイズ)薬のカレトラ
⑤日医工の急性膵炎治療薬のフサンの5品目です。
インフルエンザ治療薬アビガン(ファビビラビル)は安倍首相の記者会見でも紹介され
ニュースで大きく取り上げられていますが、中国の臨床試験でも胸部CT画像、PCR検査陰性化までの日数などで対照群に比べて極めて良好な結果が得られています。
アビガンは核酸アナログに分類される医薬品で、ウイルスの増殖に必要なRNA合成を阻害する働きがあります。
臨床試験成績を見て評価する必要がありますが、新型コロナウイルス感染症治療薬としてかなり有望といえます。
レムデシビルも核酸アナログで、ウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する作用があります。
中等度から重度の患者を対象に大規模臨床試験(国際P3試験)が進行中で、プラセボ対照群が置かれてはいないものの途中経過報告で症状改善が認められていて、米国を中心に新型コロナウイルス感染症治療薬として早期承認を取得する可能性があります。
膵炎治療薬のフサン(ナファモスタット)は新型コロナウイルスが細胞に侵入する際に働くプロテアーゼを阻害するので、予防的にも使える可能性があります。
臨床試験の成績が期待されます。
関節リウマチ薬のアクテムラ(中外製薬)はIL(インターロイキン)6を抑制する作用があります。
IL-6が過剰に働くとサイトカインストームという状態になることが分かっていて発熱・低酸素症などを起こしショックや多臓器不全で死にいたることもあります。
新型コロナウイルス感染症の重症化にサイトカインストームの関与が指摘されており、中国で重症患者を対象にアクテムラを使用し、20人中19人回復したとする報告が出されました。
4月8日付で中外製薬から国内フェーズ3試験の実施計画をPMDA(医薬品医療機器総合機構)を提出され、早期の試験実施、承認取得を目指しています。
重症患者の肺炎症状への効果が期待されます。
京都大学特別教授の本庶佑氏はテレビ出演で、現状での新型コロナウイルス対策として、以下の3点が重要と指摘されました。
- PCR検査の大幅増
- 東京圏、大阪圏、名古屋圏などで1カ月の完全外出自粛
- 外国で有効性が示された治療薬の早期導入
治療薬としてインフルエンザ治療薬「アビガン」、4月8日に国内フェーズ3試験実施計画をPMDAへ提出した「アクテムラ(トシリズマブ)」の早期導入を提言しました。
まだ、新型コロナウイルス感染症治療薬への確実な治療薬は手にしていませんが、現在猛スピードで開発が進められています。
早くこのコロナウイルス感染症の収束を図る上でも治療薬の開発は極めて重要です。
次回は、もう少しくわしく治療薬開発の動向を報告したいと考えています。
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